イランカラプテ!
今日もアイヌを題材にした絵本を紹介します♪
『パヨカカムイ
-ユカラで村をすくったアイヌのはなし-』
かやのしげる・文
いしくらきんじ・絵
【あらすじ】
わたしはかりのへたな、まずしいアイヌでした。
でも、とくいなことが、ひとつありました。
それは、少年英雄物語、ユカラをかたることでした。
ある日、病気をまきちらす神、
パヨカカムイが村にやってきました。
パヨカカムイは、わたしのユカラをとても気にいって、
じぶんのしごとをわすれ、遠くにさりました。
この話は、アイヌ民族にかたりつがれたむかし話です。
ひとりでも多くの子どもたちが、
アイヌの物語にしたしんでほしいとねがっています。
萱野 茂(はやの しげる)
このお話に出てくるパヨカカムイは、アイヌに伝わる人々に害をもたらすのが役目の疫病の神さまだそうです。
狩りが下手で、家族に満足な食事も与えられない貧乏なアイヌの男が唯一得意なユカラ(ユーカラ)。
※萱野茂さんは「ユカラ」とした方がより忠実としているそう。
ユカラとは、アイヌ語で「叙事詩」を意味し、ポンヤウムペ(ポンヤウンペ、ポイヤウンペ、ポンヤンペとも記される)というアイヌ民族のユカラ(ユーカラ)において語られる人間少年の英雄が自分のことを語る長いながい物語のことです。
体一つで空を飛び、海に潜ると魚と一緒に泳ぎ回り、時には傷つき命が朽ちても生き返るなど、アイヌは自分自身では絶対にできないことをポンヤウムペという少年に託して、空想たくましく縦横無尽に活躍させるのがユカラ(ユーカラ)です。
アイヌ民族に語り継がれている物語には3つに分類されるそうで、ユカラ(英雄叙事詩)、カムイユカラ(神謡、神が自らのことを語る話)、ウェペケレ(昔話)の3つがあります。
ちなみに、この絵本はウェペケレ(昔話)にあたります。
ウェペケレ(昔話)は極めて身近な話で、人間としてしなければならないことや、してはいけないことを教えるものであり、そのためウェペケレ(昔話)の終わりには必ずといっていいほど「だからこうしてはいけません」という教訓の言葉が入っています。
この絵本の最後にも、
「だから今いるアイヌたちよ、ユカラが上手であれば村を救うこともできる。人が死んだ時は、最後まで語り、クマを獲ったときは途中でやめるのだ」
と、一人のアイヌが語りながら、この世を去りました。
とあり、アイヌの人たちにこうするようにと教えています。
つまりは、アイヌ社会ではユカラを一人前に語れることは大事なこと。
また、人が死ぬ時、熊送りの時のユカラの語り方について。
その二つを教えているウェペケレ(昔話)なのです。
なんの取り柄もない男はたったひとつだけ得意な事があり、その得意な事のおかげで病気から村を救ったというこの話。
もとはアイヌの人たちに対しての教訓としてのお話ですが、
このお話を読んで個人的に思ったことは、
人間誰しも苦手なものがあれば、必ず得意なこと、また良いところがある。
それは、けして無駄ではないのだから大事にしていくんだよ。
という風に、現代に生きる私は感じ取りました。
・・・だいぶ勝手な捉え方をしているかもしれませんが。
これを読んだ時の私はなんとなく、そう教えられたような気がしました。
それから、最後の1ページに、
萱野茂さんがアイヌ民族に語り継がれている主な物語のことや、この絵本について色々と話して下さっており、アイヌのことをもっと知りたい私にとっては、その1ページだけでもとても面白い内容でした♪
イヤイライケレ!