イランカラプテ!
アイヌの題材にした絵本を紹介します!
『セミ神さまのお告げ-アイヌの昔話より 』
古布絵師作・再話 : 宇梶静江
【おはなし】
昼も夜も美しい歌を歌う、六代の人の世を生きるおばあさん。
歌で大きな津波がくることを予言し警告します。
おばあさんの歌にならい避難する村人たちもいれば、
歌を信じずにただただお腹をかかえて笑う村人たちもいました。
ある日、その予言通りに大きな津波が押し寄せてきて、
警告を信じなかった村人たちの多くは命を落としてしまいました。
かろうじて屋根の上に登って助かった村人たちも屋根ごと海に流され、
おばあさんもその人たちと共に流されながら
「助けてほしい」と歌を歌い続けます。
その歌に海の主 アトゥイコルカムイ・エカシ が怒り、
おばあさんは六つ地獄へと落とされました。
なんとか地獄の穴を抜け出したおばあさんは、
セミ神さまとなり、地上へと蘇ったのでした。
この絵本の最後に載っている、著者である宇梶静江さんの解説を読むと、さらにこのお話に深みがまして、ただ不思議なお話というだけで終わらず、アイヌ民族の独特の世界観、考え方をより感じることができます。
なぜおばあさんが六代の人の世を生きたということなのか、宇梶静江さんのあとがきを読んで、「そういうことだったのか!」と驚きと感動が一気にきました。
ただ単に”セミに生まれ変わったのでした。おしまい”というわけではなかったのです。
『六代の世を生きる』、『六つ地獄』、
そして、『セミへと生まれ変わり地上に出る』
その言葉をよーく考えるとすべてが繋がり、意味があるのだとわかります。
そして、この絵本の魅力はお話だけではありません。
物語を飾る絵がとても魅力的なのです!
上の写真を見るとセミの絵のように見えますが、じつは布や刺繍で作られたものなんです。
著者のところに、古布絵師とかいてあるのですが、
この絵本はすべて『描いた』のではなく糸や布で『刺繍している』のです。
はじめはあまりに聞き慣れない言葉だったので、「古布絵師とはどういうこと??」と思いましたが、よくよく見ると表紙のセミが描かれているのではなくて、縫ってあるのだと気づいて驚きました。
ネットで絵本を調べていた時は糸や布で描かれているのなんて気づかず、図書館で実際に手にとってみてそれと知りました。
このような表現の仕方もあるのだと、その発想は斬新で、それでいて味があり、とても素敵な古布絵です!!
おそらく、多くの人が表紙のセミの羽の刺繍に圧巻されると思います。
アイヌ文様も散りばめられおり、古布絵という表現によって、この絵本のお話はより一層引き立てられています。
ぜひぜひ読んで欲しいです。
そして、この古布絵を見てほしい!
最後に、
この絵本の著者である古布絵師の「宇梶 静江さん」は、俳優であられる「宇梶 剛士さん」のお母さまなのだそうですよ。
イヤイライケレ!