《ふうの物語説明》
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思いのままに風を吹き起こすことが出来る風の女神 ピカタカムイ。
毎日刺しゅうをして暮らしていたピカタカムイは、
ある日、ひとつのアイヌの村が目にとまりました。
忙しそうに働く人、駆け回る子どもや犬。
そんな楽しそうな様子を見ていたピカタカムイは
人間たちをおどかしてやろうと、
いつものくせで悪さをしたくなってしまいました。
「風よおこれ、風よおこれ・・・」
ピカタカムイは山の上で舞を踊りました。
風の荒れ狂う様にますます嬉しくなって、
ピカタカムイは六日間も舞い続けました。
荒れ狂う風、大きな波に襲われ、
アイヌの村はきれいになくなってしまいました。
ところが、よく見ると一人の若者が住んでいる家だけは残っていたのす。
心底悔しいと思ったピカタカムイですが、
もう踊る力も残っていなかったので、
仕方なく家に帰りました。
何日か経った後、
ふと見ると吹き飛ばした村は元どおりになっていて、
みんな楽しそうに暮らしていたのです。
ピカタカムイは腹が立って、嵐の舞を舞いました。
あっという間にアイヌの村は荒地になりましたが、
やはりあの若者の家だけは残ったままです。
これにはピカタカムイもさすがに諦めました。
それから間もなく、
アイヌの若者が突然たずねてきました。
若者は楽しい踊りを見せてくれたお礼にと、
ピカタカムイの前でアイヌの舞を踊り始めました。
風が吹いて家は壊れ、
寒い風が吹きつけ、雪やあられに体中は傷だらけ。
熱い風がふきつけ、肌は焼け焦げて息が苦しい。
ピカタカムイは傷だらけになってしまいました。
「あなたのために、たくさんの命が失った。
殺そうと思ったが風の女神であるあなたには
生きたまま罰を与えたのです。
次に強い風を吹かせたら許しませんよ」
若者はそう言うと、扇をあおいで、
ピカタカムイの肌の傷、
家や着物もきれになおしてくれたのです。
ピカタカムイは若者の名を尋ね、
その正体にビックリしました。
若者は神の国からアイヌの国へ行った
強い知恵のあるオキクルミだったのです。
それかというもの
ピカタカムイは沙流川のほうへは強い風をおくらず、
おだやかでさわやかな、
薬になる風だけをおくっているのです。
そういって、ピカタカムイは
オキクルミとアイヌの村の話をしてくれました。
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今回は風の神さまが登場しました。
ピカタカムイは風の神といっても悪の神様のひとつなのだそうです。
嬉しくなって嵐を巻き起こすピカタカムイ。
その名の通り、言い方は悪いですが、
我がままで横暴なひどい神だなぁというのが正直な感想でした
そのおかげといったらおかしいのかもしれませんが、
悪さをした風の神を許す、
オキクルミの寛容さがさらに際立っていたように思います。
同じ痛みや苦しみを与えることで、
どれだけひどいことをしたのかをその身自身に教えると、
最後には罰として与えた傷までも癒してあげる思いやり。
それはオキクルミだからこその底知れぬ寛大さなのではと思えます。
たいていの昔話は悪は退治するというものが多いですが、
この物語はただ滅ぼすのではなく、悪を改心させようとする
他の昔話とは一味違った面白さがありました。
物語を飾る絵も魅力的で、前にも言ったかもしれませんが、
斉藤博之さんの力強く躍動感ある描写にはいつも引き込まれます。
とても迫力があるのです!
みなさんも、ぜひ読んでみてくださいね♪
『風の神とオキクルミ』の最後のページに載っている
萱野茂さんが書いた「この絵本について」の内容を少し。
風の神ピカタカムイは、
山から吹きおろす風、山背(※)のことで、
ウエンカムイ(悪い神)の一つです。
ふつうの風のことはレラといいますが、
レラというとよい風も悪い風も含まれれる意味となります。
なので、この物語ではピカタカムイという悪い神の名前になっています。
(※)春から秋にオホーツク海気団より吹く冷たく湿った北東風または東風(こち)のこと
この悪い神をこらしめるオキクルミは、
アイヌにとっては守護神であり、
生活を教えてくれるアイヌラックル(人間くさい神)です。
アイヌの村に住んで、アイヌの人々に生活を教え、
神に対してはアイヌを守るように働きかけ、
時にはこの物語のように悪さをする神を懲らしめたりします。
オキクルミを通じて、
アイヌの人々はこうありたいという人間の姿を語っています。
アイヌにとって、神(カムイ)に対する考え方は独特なものがあります。
神は絶対的な存在ではなく、人間にとってためになる限りでの神であるのです。
たとえば子どもが川でおぼれたりすると、
川の神に向かって
「川の神さまが不注意だからこうなった。
今後はちゃんとアイヌを守りなさい」
と厳しく叱りつけます。
無論、アイヌはただ守ってもらうだけでなく
イナウ(御幣)をお礼としてあげ、お祈りを欠かさないのです。
*絵本内にある「この絵本について 萱野茂」を参考に要約しています。
最後に、ひとつ余談を--------------、
このブログタイトル『Rera-レラ-』も
アイヌ語で『風』という意味からつけました♪
「どうして??」---と聞かれると、吹き渡る風が好きだからでしょうか。
「なんのこっちゃ?」と言われそうですね
風がサァ〜と肌を吹き抜ける心地が好きといえばいいのかな。
うーん、表現が難しいっ!!
とにかくあれです、
暖かな春の風も
爽やかな初夏の風も
蒸せるような真夏の風も
涼やかな秋の風も
凍てつく冬の風も
季節薫る風が好きです!!
それから、季語や手紙の挨拶などでもよく使われる
風を使った言葉にも素敵なものがたくさんあります。
たとえば、
*風薫る …新緑、若葉の中を吹き渡るさわやかな初夏の風。
(昔は花の香りを運んでくる春の風を指すこと が多かったようですが)
*風光る …春の季語。
暖かくなって日差しが強くなる季節に、
吹く風も輝くように思える様子
*色なき風…秋の風のこと。
「色なき」とは、はなやかな色や艶のないこと。
などなど調べるといろいろとけっこうありました。
こうしてみると、日本には美しい言葉はがたくさんあるんですね。
どちらかというと文系な私だけども、古文は大の苦手です・・・。
(それじゃあ文系って言わないのか??)
ととっ、
話がおかしな方向へいきそうなので、このへんで♪
イヤイライケレ!