イランカラプテ!
最近、だんだんと暖かくなってきました〜
なんだか暑いなぁと思っていたら、
見ると部屋の温度が24.5℃もありました。
天気のいい昼間ならまだしも、夜中でこの温度にはびっくりです。
じんわり暑さを感じるのも無理はないですね。
さて、そんな春の暖かさを感じながら、
今日はアイヌの絵本を紹介したいと思います!
アイヌのカムイユカラ(神謡)より
『シマフクロウとサケ』
古布絵制作・再話:宇梶静江
【出版社:福音館書店 からのあらすじ紹介】
シマフクロウは羽を広げると2m程の大きな鳥で、
金色の目玉で四方八方に睨みをきかせる、アイヌの村の守り神。
退屈して海辺にやってきてサケの群れに出会い、無礼なサケに腹を立てます。
さて、その顛末は?
《ふうによる物語説明》
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フムフムカト フムフムカト
山でのひとりの暮らしに飽きた
村の守り神 シマフクロウのカムイチカプは
山を下り、浜へおりてきました。
沖で神の魚 サケの群れと出会いました。
先頭のサケは仲間たちにこう言いました。
「尊いシマフクロウのカムイチカプを恐れつつしみなさい」
ところが最後にやってきたサケたちはこう言いました。
「そんなでっかい目玉をしたものが、恐れ多い神だというのかい」
テレケテレケ、ホリピリピと海の水を撒き散らしました。
カムイチカプは怒り、
銀のひしゃく、シロカネピサック
金のひしゃく、コンカネピサック
を使って海の水をすべて汲み上げしまいました。
海は干上がり、サケたちはもがき苦しみます。
先頭のサケはうなり声を上げなながら言いました。
「神を恐れぬことをしてはならぬと言ったのに、
おまえたちが耳を貸さぬから、仲間ともども死のうとしているのだ」
それを見たカムイチカプは、
「わたしが怒りたてたとて、なんのいいことがあろうか」
と思い直し、海の水を戻しました。
「尊いカムイチカプよ、怒りを鎮めてくださり、ありがとうございます」
先頭のサケは喜び、静かに去って行きました。
それから、カムイチカプは山へと帰ることにしました。
そして、いつものようにひとり寂しく山で暮らすカムイとなって
このように語っているのです。
フムフムカト フムフムカト
これが、シマフクロウのカムイチカプの語った物語。
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この物語が伝えたいもの。
それは、
「見かけだけで相手を決め付けるのは間違いだよ」
ということを教えてくれています。
この世に生きるものには、それぞれに役割がある。
それをわきまえていなければいけないのに、
最後尾にいたサケたちは、見かけだけで判断して、それを馬鹿にしたのです。
その結果が、自分だけでなく仲間たちまでをも苦しめてしまいました。
お話を通して、そういった敬意や礼儀的なものを、
私たちに教えてくれている内容だなと思います。
自然を敬い、自然と共に生きる、アイヌ民族ならではのお話ですね。
それから、
以前に紹介した絵本
『セミ神さまのお告げ-アイヌの昔話より 』
のように、こちらの絵本も
古布絵《布や刺繍で作られたもの》で、お話が描かれています。
海の水しぶきなど、水の動きを刺繍で描いているのがまた面白いです。
ただ刺繍や布で描いているのではなく、
その中にちゃんとアイヌ文様が入っているのが、
アイヌの物語をより引き立てているように思います。
神様が自ら語る物語『カムイユカラ』の特徴である、
物語の始めや終わり、その節々にはいる「サケヘ」という歌の一節。
「フムフムカト フムフムカト」は
シマフクロウの静かに鳴くときの声音を表しています。
「テレケテレケ」は、アイヌ語で「跳ぶ跳ぶ」
「ホリピリピ」 は、アイヌ語で「はねるはねる」
この絵本には、作者・古布絵を手がけた宇梶静江さんが
読者に向けて話された言葉が載っているのですが、
それを参考に、いろいろとここに書いておこうと思います。
まず、シマフクロウの目について。
お話の中でも最後尾のサケたちが馬鹿にしていた、
そのギョロリとした大きな目。
アイヌ民族にとって村の守り神であるシマフクロウの目はどうして大きいのか。
それは、カッと見開いたその目で村を守っているからと言い伝えれれているから。
「夜も見張って、私たちを守ってくれる知恵のある神様で、
目ん玉が大きいのはそのしるしなんだよ」
大人たちは子どもたちにそう話してくれたのだそうです。
また、何か危険が迫った時は、
何キロにも渡って響くほど、ものすごい鳴き声で鳴きます。
アイヌの人はその声にハッとして、耳をそばだてるのです。
昔は家に床などなく、地面にコモを敷いて、
その上に「キナ」という編んだゴザを敷き、
毛布を敷いて寝ていました。
その暮らしの中で、地面に耳をあててみると、
遠くから人がやってくる音、まわりの獣の動きが察知できたのです。
でもそうやって人間が気づく前に真っ先に知らせてくれるのがシマフクロウだった。
だから、アイヌの人たちは、
シマフクロウを守り神として大切に敬ってきたのだそうです。
物語を通して伝えていったアイヌの文化について簡単に。
アイヌの人たちは子どもの頃、
大人たちに生きていく上で大切なことを
このように物語を通して伝えてくれていました。
アイヌの世界は、火も水も風も、動物も草花も、
神様としてそれぞれに役割をもっており、
自分たちを助けてくれているものでした。
暮らしの中で敬いをもって向き合うように、
大人たちは子どもたちに語って聞かせていたのです。
それから、
そんなアイヌの人たちのある生活の情景も少し書かれていました。
囲炉裏に鍋をかけ、肉汁を煮ている時、
あやまって肉汁をこぼしてしまうと、
火の神様を汚すことになると言われたのだそうです。
「こぼした灰の上に塩をまき、火の神様に謝りなさい」
と親は子どもに言います。
その通りに塩を火の神様にパッパとかける。
すると、火がパチッパチッとなって、
それで清められたのだと納得できました。
また、山に薪を採りに行く時、親はこう言いました。
「火のそばで、クマの悪口を言うな」
クマは山の神様。
一方、火の神様はおしゃべりで、
「すぐにその悪口は山の神に伝わるから、気をつけろ」
ということでした。
それはまた、山にはクマがいるから気をつけていけよ、
という戒めでもあったのだそうです。
知れば知るほどアイヌの文化はとても興味深いです。
実際にそうやって生活してきたアイヌの方たちのお話を聞くと、
その私生活をもっと知りたいという思いにかられますね。
なんと言えばいいでしょうか、
書物としてお堅く書いているものよりも(何か表現が違うような?)、
こうやって実体験を語ったままに書いているものの方が
より引き込まれるといいますか・・・。
読み手の中にすっと入ってくる感じがします。
大切なことを教えてくれるアイヌの昔話。
独特な技法で描かれた古布絵。
作者様の宇梶静江さんのお話。
どれをとっても読み手を楽しませてくれる素敵な絵本です。
アイヌの文化をまた感じられますよ。
イヤイライケレ!