イランカラプテ!
今日も、アイヌを題材にした絵本を紹介します。
『アイヌネノアンアイヌ 』
萱野 茂 ・文
飯島俊一 ・絵
ずっと昔から北海道で暮らしていたアイヌ。
自分たちの言葉で話し、自分たちの神さまを信じてきたアイヌの人たちの歴史や生活を、2編の楽しい昔話とともにおとどけします。
福音館書店が『たくさんのふしぎ 1989年10月号』で刊行したものです。
アイヌの文化伝承の第一人者 萱野 茂さん が子ども時代の思い出と、その当時のアイヌの生活や考え方をまとめた本です。
タイトルである『アイヌネノアンアイヌ』とは、「人間らしい人間」という意味で、菅野 茂さんのお母さんが、
『アイヌネノアンアイヌ エネップネナ(人間らしい人間、人らしい人)』
と繰り返し言っていた言葉なのだそう。
アイヌのコタン(集落・村)でアイヌという言葉はとても大切な言葉で、行いのいいアイヌだけをアイヌと呼び、働きもしないでぶらぶらしているような者はアイヌとは呼ばずに、ウェンペ(悪い者)といったのでそうです。
私たちは普段からアイヌという言葉を使っていますが、アイヌの人たちにとって単なる呼称ではなかったんですね。
それを知ると、アイヌという言葉には、アイヌとして生きる彼らの誇りがあるように私には感じます。
同時に昔はアイヌという言葉が差別的な言葉のように扱われていたことが、悲しいことだと改めて気づかされました。
この絵本でも、和人(アイヌの人たちから見たほかの日本人)による理不尽な法律に縛られ、アイヌの人たちの自由を奪われた当時の辛い過去も少し描かれていて、そこで何より印象的だったのが、菅野茂さんのお父さんのことであり、何より彼のお父さんが流した涙の意味に、なんと言えば正しいのか・・・悲しいといいますか、苦しいといいますか・・・胸が締め付けられるような感じで心がぎゅっとなりました。
(うまく伝えられなくてすみません。)
菅野茂さんの子ども時代の思い出とともにアイヌの人たちが受けてきた辛い過去も知ることができます。
そのほかにも、
アイヌの伝統的な家のつくり方、家の中の様子、また衣装のひとつであるアットゥシ(この絵本ではアット゜シと表記)の織り方など、アイヌの生活文化をたくさんのイラストとともに説明されていて、読むだけでなく、目でもとても楽しませてくれます。
中でも家の中の様子を描いたイラストとその説明は個人的にとても興味深かったです。
↑↑
(アイヌの絵を描く時の参考資料にもなるという、
思いっきり趣味の観点から見ている自分)
(ここから11/30付追記文)
あと、これは宗教的な話になりますが、
この絵本にも書かれいた内容をもうひとつ紹介します。
私がアイヌの文化を調べている時に、さらにアイヌのことを深く興味をもつきっかけになった、アイヌ文化の特徴であるアイヌと神との関係についても、萱野茂さんの思い出とともに簡単に少し書かれています。
アイヌの人たちは、山の神、川の神、そして、家の神、火の神がいると考えていたように、動物たちや川に住む魚も神と考えていました。
自然のすべてを敬い、大切にしていたのです。
ここまでならアイヌの人たちだけに関わらずに、
神さまを敬い、大切にするという考えはどこの地域でもよく聞きます。
しかし、アイヌの人達は、神さまを敬い大切に思いながらも、アイヌと神は互いに【対等】であるという考えであった、ということです。
アイヌの人たちは神さまに助けられたときなどは、木で作ったイナウ(※)とお酒を神さまに捧げてきちんと感謝しました。
でも逆に、もし山や川で事故が起きたりすれば、
たとえ神である山や川でも、神に対してアイヌの人たちはそれを咎めるのだそうです。
守ってくれなかった神さまを叱り、次はちゃんと注意してほしいとお願いします。
「私たちは神様を大切に思っているから、神さまも私たちを大切にしてほしい」
アイヌと神さまはお互いに支え合う関係であったのだということです。
(※)一本の木から削りだして作った棒で、これを用いることによって人間の意図するところが神さまに伝わり、神さまも力が増すと考えられていた
この絵本ではなく、
これとは違う書籍でアイヌと神との関係性について知った時、たいがい宗教では「神は畏怖する存在」であるものなのだと思っていた私にとっては、アイヌの人たちの神に対する考え方はとても面白いと感じました。
そして、もっともっとアイヌについて知りたいと思うようになりました。
------と、くだくだと長いこと書いていましましたね(´Д`;)
とにもかくにも、
40ページといえども、この本はアイヌの様々な文化、彼らの持つ思想などがわかります。
そして、イラストを見るだけでも楽しい素敵な絵本です!
イヤイライケレ!